「右手にナイフ」「左手にフォーク」、台湾でも仕事と人材のマッチングは難しい

ナイフとフォーク(イメージ)

新入社員だったころ、せっかく学んだ中国語が仕事で活かされない焦りと若気の至りで、仕事の内容に文句ばかり言っていました。そんな日々が続いたある時、部長から冗談交じりでこんな例え話をされたことがあります。

俺だって「右手にナイフ」「左手にフォーク」で食事をしたいんだ。でももし無人島とかに流れ着いてそういった便利な道具が無ければどうする?
できるかぎり「ナイフらしい形をした石」や「フォークに近そうな枝」を探しだして食事するだろう?君の言うことも理解できるが、上司と部下の関係は上司から見るとこんな感じなんだ。

この部長はエリート社員で若くして部長に出世し、管理される側とする側両方の記憶が残っていたはずです。ご本人の実感を込めた言葉だったのだと思います。台湾に来て雇う側に回ったり、また雇われる側に戻ったり、立場はコロコロ変わっているのですが、この言葉をよく思い出します。

自分がやりたい仕事と自分にできる仕事は違う

起業してもお金のためには仕事を選べないことがほとんどです。特に雇われる側の場合、「自分がやりたい仕事と自分にできる仕事は違う」ということを理解する必要があります。

「自分のやりたいことであれば熱意を持って取り組めるのに・・・」と思う方もおられるかもしれません。確かにその通りですが、それでは自分のやりたいことを見つけるまでに飢え死にしてしまいます。

働いていることで自分のやりたいことをやるための現実的なアプローチを考えるきっかけにもなります。「大学を卒業したらまずは働いてみたら」というのは実はそれほど悪くない話なのです。少なくとも給料は入ります。

会社の要求にぴったりの人材などいない

雇う側の場合、「会社の要求にぴったりの人材などいない」と割り切るべきです。台湾の日系企業を見ると、本社から派遣されてくる人材ですら、語学力(中国語力)などで大幅に妥協している場合が多いです。そんな人に限って自分の部下となる現地の人材には完璧を求めたりして、全然現実を見ていないと思うときがあります。

まず語学力(台湾人には日本語力、現地採用の日本人には中国語力)を求める会社が多いのですが、更に関連業務経験も必須にすると、なかなか人材が見つかりません。よって語学力か業務経験のどちらかに関してはある程度条件を緩和せざるを得ないと思います。

この場合、新しい仕事に上手く馴染めるかどうかは長い目で見ていかなくてはならないし、どうしても合わない場合もあると思われます。これは雇う側にとってもリスクですが、雇われる側にとっても同じリスクであることに目が向く人は意外に少ないと感じます。

語学力がない人に限って語学力を甘く見る

日系企業で良く見聞きするのですが、中国語も英語もできない人に限って、コンプレックスからか、有名大学を卒業し、日本語も英語もできる台湾人エリートに対して、「言葉だけできてもダメ」とか訳のわからないダメ出しをしていたりします。

正直私も外国語は苦手で中国語は発音に、英語は話すことそのものにかなりのコンプレックスがあったりするのですが、少なくとも外国語を習得する苦労や喜びは理解しているつもりなので、上記のような言葉は口が裂けても出ません。

語学習得は長い時間(数年)の投資の結果

外国語の習得はお金だけでなく、時間の投資も必要です。日本に留学し、毎日日本語に触れたとしても最低2年はみっちり勉強しないとビジネスで使えるレベルにはならないと思います。

逆に台湾に駐在している日本人の方で中国語ゼロから始めて2年以内で中国語をマスターしている方は非常に少ないと思います。5年以上いても余りできないという方もいらっしゃいます。

語学力がある人材を雇うというのは、語学学習に投じた貴重な数年の時間を買うということも含まれるわけです。

ちょっとした心構えで変わる

仕事とはいえ、せっかく縁があって一緒になっている仲間なのです。雇う側・雇われる側に関わらず、仕事と人材のマッチングの難しさを理解し、お互いの苦労を理解しあって働くと、仕事しやすいと思います。

うちの会社ですか?アルバイトの方に来ていただいていますが、うちのような吹けば飛びそうな零細企業に来ていただけるだけでも大変ありがたいと思っていますよ!感謝、感謝、です。

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