Computex Taipei (コンピュテックス・台北国際コンピューター見本市) の歩き方、「実用最先端」の製品を見る!

Computex Taipei

Computex Taipei (台北国際電脳展、台北国際コンピューター見本市)は毎年6月上旬に行われる、IT・電子製品全般の展示会・見本市です。どう見たらよいのかという問い合わせが毎年多いので、筆者なりのComputex Taipeiの歩き方・目のつけどころをお伝えしたいと思います。

海外からも大勢来る国際大型展示会

Computex Taipei (コンピュテックス・タイペイ、以後略して「Computex」)はアジアでは最大、世界でもドイツのCeBITに次ぐ2番目の規模を誇るIT・電子製品全般の展示会・見本市です。ここ数年の開催規模は以下の通りです。

出展者ブース数海外バイヤー人数海外バイヤー国数
20171,6005,01041,378167
20181,6025,01542,284168
20191,6855,50842,495171

元々海外バイヤー(買付人)向けの商談をメインにしており、海外バイヤーの数を重要な指標としています。海外バイヤーの主要な出身国・地域は中国、日本、アメリカ、韓国、香港、タイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、インド、ドイツ、フィリピンなどです。もちろん海外からの出展者も多い展示会です。

スタートアップ(ベンチャー)が集まるInnoVEX

2016年からはスタートアップ(ベンチャー)を対象とした展示エリア「InnoVEX (イノベックス)」が設置され、こちらも2019年は24か国、467者のスタートアップが出展し、台湾最大規模のスタートアップ関係の展示会になっています。

ただ台湾は元々起業が盛んなので、正直スタートアップと中小企業に大きな差を感じたことはなく、InnoVEXエリアかどうかに関わらず、どちらも面白い商品が見つかるのが台湾らしいところだと思います。

「実用最先端」を見る

Computex Taipei 主催団体、TCA (Taipei Computer Association) 東京事務所の吉村駐日代表はComputexで展示されるのは「実用最先端」であると説明をされています。

これは世界中からバイヤー(買付人)が来て、商談が行われるというComputexの元々のスタイルの関係上、研究室レベルの技術の展示は少なく、すぐにサンプルや量産品が購入できるレベルの製品が多いということを指しています。

この「実用最先端」を筆者の見方で解説すると「量産される・されている部品に実装された技術を使った最新製品」ということになります。なぜかというとComputexに出展されている製品は以下の様な経緯を経て作られたものが多いと考えられるからです。

  1. 新技術や新機能が盛り込まれた部品がサンプル出荷される
  2. 部品メーカが参考回路図などを付けて売り込む
  3. 台湾のメーカが参考回路図などを参考に色々製品を作ってみる
  4. Computexなどの展示会で展示される
  5. 台湾ブランドだけでなく、OEM/ODM(受託生産)で様々な国のブランドで製造・販売される

もちろん1に関しては、新技術や新機能に限らず、既存技術を再発見して製品に取り込むパターンもあります。いずれにせよ、量産されている部品をいかに活用して、そこにアイデアを足して、面白い製品を作っているのか、「実用最先端」を見るのが筆者がComputexを見る醍醐味です。

「Un-bundle(アンバンドル)」と「Re-Bundle(リバンドル)」

あと筆者のComputexの見方として、「Un-bundle (アンバンドル)」と「Re-Bundle(リバンドル)」があります。「bundle (バンドル)」は組み合わせるということですので、「Un-bundle」とは細分化・分離の意味になります。また「Re-Bundle」とは再度組み合わせるということです。どちらも詳細は後述します。

「Un-bundle」は「切り分けの妙」を見る

3Dカメラ モジュール
3Dカメラ モジュール

「Un-bundle」に含まれる展示品には部品や半製品であるモジュールがあります。

半導体チップなどの部品は台湾以外のメーカの物が多いですが、逆に最終品のメーカ向けにどんな技術・機能が盛り込まれた何を売り込んでいるかを知ることができます。

また部品を組み合わせた半製品であるモジュールは部品単独ではなかなか使いこなせない技術を最終製品に組み込みやすくするために製造される「Un-bundle」的な商品と言えます。

例えば製品のカメラ部分はレンズとセンサーを別々に買ってくるより、レンズとセンサーがセットになったモジュールを使うのが普通です。もしデジカメなどの形で最終製品まで作りこんでしまうと、応用が利きませんが、カメラ・モジュールという半製品の形に切り出すことでカメラ機能を組み込んだ最終製品も作りやすくなるわけです。

つまり筆者の場合は「Un-bundle」は技術トレンドだけでなく、どう技術や機能を切り出すの目のつけどころ、「切り分けの妙」を見ているわけです。

「Re-bundle」は「組み合わせの妙」を見る

家庭用ロボット
家庭用ロボット

「Re-Bundle(リバンドル)」に含まれる展示品として多いのはやはり最終製品です。他の製品とは違う観点で機能や技術を再度組み合わせているということで「Re-」を付けて「Re-bundle」と言っています。

例えば最近だと家庭用のロボットはこの「Un-bundle」的な商品と言えそうです。人の声やカメラに映るものや人に反応して、喋ったり、移動したり、腕を動かしたりすることができます。

こういったロボットを支えるMPU・メモリ・カメラ・マイク・各種センサ・OS・音声認識・音声合成などの多くの要素は実はスマートフォンと大きな変わりがありません。移動したり腕を動かしたりする部分にモーターを使っているのが大きな違いと言えるでしょうか。

筆者の場合、「Re-bundle」はこうやって組み合わせを見直して新しい製品を作る、「組み合わせの妙」を見るのがComputexにおける見どころの一つです。ただ単純に新商品を見るのではなく、どういう技術や部品の組み合わせで作ったのかを見るのも非常に面白く感じます。

「Un-bundle」と「Re-Bundle」両方で解釈できる製品も

「Un-bundle」と「Re-Bundle」の両方で解釈できる製品もあります。

例えば、Bluetooth (ブルートゥース)による近距離通信機能にMPU(CPU)とメモリーなどを搭載し、ほぼ単独で動作可能な半導体チップはいかがでしょう?

例えば紛失防止タグやウェアラブル端末などの製品に組み込む側から見ると「Un-bundle」的な商品ですが、Bluetoothという無線規格に興味がある人から見ると「Re-Bundle」的な商品に見えるかもしれません。

自分独自の「アンテナ」を張る

様々な観点をご紹介しましたが、大事なのは先ほど挙げた筆者の観点も参考にしていただきながら、自分なりの「アンテナ」を持っていただくことだと思います。言いかえると「どういう形で台湾とかかわったビジネスができるか」ということを色々考え、仮説を立てるということです。

「何が売れるか」なんて他人に尋ねる話ではありません。分かっているくらいなら本人が早速売っているでしょう。何の前提も努力もなく売れる製品というのはありませんし、誰から見ても有望な製品は既に誰かに取られているものです。自分の「アンテナ」で自分だけの「掘り出し物」を見つけるのがComputexなどの展示会では重要だと思います。

テーマからの連想が大事

Computexは毎年時代にあった技術トレンド別に出展エリア分けが行われています。例えば2021年は以下のテーマが予定されています。

  • AI
  • IoT
  • 5G
  • エッジコンピューティング
  • ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(High-Performance Computing、HPC)
  • サイバーセキュリティー
  • ゲーミング
  • イノベーション&スタートアップ

でも、例えば「AIを使った製品に興味があるから、AIのエリアだけを見る」というのは恐らく先ほど挙げた自分だけの「掘り出し物」を見つけられる可能性が下がると思われます。

なぜならそれぞれの技術分野は密接に絡んでおり、それぞれの商品がどのエリアに出てもおかしくないからです。例えば自分はAI関連製品だと思っていても、IoTやエッジコンピューティングのエリアに出展されている可能性があります。

字面の表面を追うのではなく、やはり自分独自の「アンテナ」を張り、自分なりの仮説を持ち、考えながら見て行く必要があると思います。

キーパーソンと直接話して出展者の本質的な強みを知る

また考えながら見るということでいうと、展示製品というのはあくまでも結果にすぎません。展示製品を起点に「どうしてこういう製品を作ったのか」などの背景や周辺情報を確認することも出展者やその製品を理解するうえでとても役に立ちます。

展示製品はイマイチでもその会社の技術力が高く、適切なアイデアや企画があれば一緒にヒット商品を生み出せるかもしれませんし、展示製品を改良すればヒット商品になるのかもしれません。そうやってヒット商品づくりに関わるハードルを下げるためのパートナー探しをする方法もあるのです。

Computexは台湾の中小企業からみると、海外からバイヤーが来る絶好のチャンスです。多くの中小企業では会社のオーナー、いわゆる「老闆(ラオパン)」や開発責任者がブースにいて、商談にあたります。そういう人に展示製品への思い入れを聞くのもかなり有益な情報になります。

会場は隅から隅まで見るべし

未来のヒット商品を抱えている会社はまだ資金力がそれほど強くなく、お金のかかる目立つエリアに広いブースを出せない可能性が高いです。よって自分だけの「掘り出し物」はそういった人が余り通らない片隅のブースにある可能性も高いのです。

また先述の主催者が用意したテーマの分類で展示製品を予測するのも難しい部分があるため、Computexの会場は大変広いですが、隅から隅まで足を棒にして歩くべきだと思います。正直開催期間4日間全て会場にいても良いくらいです。

新型コロナの関係でオンライン化が進むかもしれませんが本質は変わらないと思います。ウェブに出展者や製品の情報が載ろうが、VR/ARで会場が再現されようが、自分なりのアンテナを張りつつ、隅から隅まで見て行くスタイルを筆者は当面続けると思います。

参考文献 (クリックすると一覧を表示)
  • 台北國際電腦展覽會 – Wikipedia (https://zh.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%8F%B0%E5%8C%97%E5%9C%8B%E9%9A%9B%E9%9B%BB%E8%85%A6%E5%B1%95%E8%A6%BD%E6%9C%83&oldid=61061493、2021年03月07日閲覧)
  • COMPUTEX TAIPEI 2017 展覽成果 (http://my.computex.biz/2017/show/Info.aspx?content=showResult、2021年03月07日閲覧)
  • COMPUTEX TAIPEI 2018 展覽成果 (https://my.computex.biz/2018/show/Info.aspx?content=showResult、2021年03月07日閲覧)
  • COMPUTEX TAIPEI 2019 展覽成果 (https://my.computex.biz/2019/show/Info.aspx?content=showResult、2021年03月07日閲覧)
  • MeetTaiwan-InnoVEXの規模が再拡大  より多くのイノベーションがビジネスチャンスとなることを期待 (https://www.meettaiwan.com/ja_JP/news/2019050003/12/InnoVEX%E3%81%AE%E8%A6%8F%E6%A8%A1%E3%81%8C%E5%86%8D%E6%8B%A1%E5%A4%A7%E3%80%80%20%E3%82%88%E3%82%8A%E5%A4%9A%E3%81%8F%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%8C%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8B…html?&totalCount=70、2021年03月07日閲覧)

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