どんな会社でもゴールはある

どんな会社でもゴールはある

どんな会社でもゴールがあります。売却や上場というのは嬉しいゴールですが、倒産や任意整理といった嬉しくないゴールもあります。今回は敢えて嬉しくないゴールの話を書きたいと思います。

若くして共同創業者の一人に

今回登場するのは女性起業家Lさん。元々芸術方面に関心があったそうですが、縁があって10年くらい前に何人かと共同で、家電や電子機器に組み込まれるソフトウェアの開発を行う、IT関係の会社を設立し、その代表として経営の手腕をふるってきました。

台北・南港にある軟體園區(ソフトウェア団地)に入居

こういったソフトウェア関係の事業はソフトウェア産業の育成を図る台湾政府の政策にも合致していました。私が知り合った3年ほど前は 台北・南港にある軟體園區(ソフトウェア団地)に入居、台湾政府からの信用保証を得て、有利な条件で資金調達を行い、事業を拡大していました。

専門としての経営があった会社

台湾の会社の場合「会社はオーナーのもの」という意識が強いのですが、Lさんの会社はLさんたち以外にもベンチャーキャピタルなどの出資者があり、更に外国人株主もいたため、「ナアナア」ではなく、厳しく経営実績を問われる本物の董事会(取締役会)や株主総会を行ってきました。

Lさん自身も英語圏で教育を受けたこともあり、欧米流の経営スタイルも意識していたのかもしれません。欧米圏の顧客案件もあり、英語での電話会議も頻繁に行われていました。

M&A(企業の合併や買収)の話などもあり、会社としての規模は小規模ながら、経営者としてのLさんは若いながら実にいろいろなことを経験した経営の専門家となっていたのでした。

夢は上場!大手企業からの買収話は全て断る

Lさんたちは最初から上場を目指していました。Lさんの会社の開発力を見込んで複数の企業から買収の話が来たものの、全て断り、独力で事業を拡大、上場まであと一歩のところまで来たのです。

社運をかけた大プロジェクト失敗、借金の山に

ところが社運をかけた大プロジェクトに立て続けに失敗、日本円で1億円以上もの負債が残る事態に。台湾でもこういう時は倒産、任意整理、最悪は(法的な後片付けを一切せずに)夜逃げということは珍しくありません。

ましてや外部の株主もおり、経営スタイルもLさん一人のワンマンスタイルではありません。法律にのっとって、倒産や任意整理を選んでも誰も批判しなかったと思います。

愛着がある会社を潰したくない

芸術家肌のLさんだからでしょう、会社のロゴも動物をモチーフにしたかわいいものが使われていました。当然経営者として会社には愛着があります。また従業員や株主に迷惑をかけたくないということで、Lさんは部門を売却し、従業員には転職先を紹介し、会社を徐々に縮小していく、縮小均衡策を選択しました。

会社バカ一代(ほめ言葉です)

縮小均衡策を選んで従業員数が少なくなったところで、まず会社を軟體園區から台北市内の雑居ビル内に移しました、これが1年ほど前です。縮小均衡は幸いうまく進み、もう少しで会社も負債が無くなり、身軽な状態になる所まで来ました。

私は、そんなことも知らずに数年ぶりに連絡し、経緯を聞いて、思わず「そこまで苦労しなくてもいいのに・・・」と絶句。でもLさん曰く「確かに多くの人に自分への要求が厳しすぎるのではないかといわれました、でも絶対に逃げたくはなかった。」すごい!

でも次の一言にはちょっと笑ってしまいました。「借金や悩みがあると普通は寝れないでしょ?でも私は思いっきり寝られるのよ。バカじゃないと経営者なんてやってられないわよ。」本当その通り!妙な自信がどこからか湧き出てこない限り、個人で会社なんて作れません!

ノーブレス・オブリージュ(noblesse oblige)

訊いたこともないので良く分からないのですが、Lさん個人は台湾では裕福な階級に属していると思います。ダンナ様もちゃんと仕事をしていますし、お金に困っているとかそんな話とは無縁な方だと思います。

そんなLさんの奮闘は私にふと「ノーブレス・オブリージュ」という言葉を思い出しました。元はフランス語の「Noblesse(貴族)」と「Obliger(義務を負わせる)」からきており、元々は貴族、現在は貴族に限らず、社会的地位が高い人が果たすべき社会への貢献について説明したものです。欧米で金持ちが多額の寄付したりするのは、この「ノーブレス・オブリージュ」の一端です。

台湾では大きな会社でもワンマン経営者が自己保身で逃げてしまうことも珍しくありません。そんななかLさんは自分のために責任を全うしたのです。話をしていて感動しました。かといって誰とでも対等に話し、全然えらそぶってもいません。

経営手腕を活かし、さらに一歩先へ

現在は会社整理が最終段階に入っているのと同時に、Lさん自身は芸術方面の非営利団体の経営にも関わるようになっています。これは私も将来の目標としているだけあってすごい羨ましいです。日本でも芸術方面の方はお金儲けを下に見ている人が多いけど、一定の収入がないと事業が継続できないし、経営に詳しい人がそういう貢献をするのは良いと思います。

そんな話をしたら、Lさんも嬉しそう。「そうなのよ~、全然その辺の話がかみ合わなくてね、もし日本での活動とかもあったら協力お願いしますね!」もちろん協力させていただきますとも。

それにしても、そんなに歳も変わらないのに、経営者として2歩も3歩も先を歩いているLさんを見ると、同じ経営者としては羨ましい限りです。私も頑張らなくては。

(2013年7月10日 更新)

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