SEMICON Taiwan(セミコン台湾、國際半導體展)という大型展示会があります。この展示会は毎年行われ、半導体製造装置・材料・設備に関わる製品・技術・サービスが展示されています。日本企業も数多く参加する台湾の大型かつ重要な展示会の一つです。
世界最大級の半導体製造装置・材料の総合展示会
SEMICONはSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International、国際半導体製造装置材料協会)が主催する展示会で日本でも行われています。しかし台湾は世界的な半導体設計・製造の拠点であるため、SEMICON Taiwanの重要度は大変高く、規模はかなり大きなものになっています。2019年の実績では、来場者:41,068人、ブース数:2,353小間、出展者数:720社に上りました。
裾野が広い半導体産業
半導体産業のポイントとして関連する分野が数多いのもポイントです。2020年では以下の分野に分類されて展示が行われました。
- 循環型経済 (Circular Economy):環境関係。エコ材料、ろ過設備、過濾設備、有機・無機・汚泥・金属などの廃棄物や排水に関する処理・回収・再利用に関するソリューションの展示。
- 化合物半導体 (Compound Semiconductor):ヒ化ガリウム (ガリウム砒素、GaAs) 、窒化ガリウム (GaN)、炭化ケイ素 (SiC)など「III-V族」と呼ばれる化合物半導体に関する展示。
- ファンアウト・パッケージング (Fan Out Packaging):FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)に関する展示。
- 再生可能エネルギー (グリーンエネルギー、Green Power):太陽光発電・風力発電のスマートグリッド、蓄電システムなどの設備など、再生可能エネルギーに関する展示。
- ハイテク設備 (High-Tech Facility):スマートファクトリーなどの工場のスマート化や設備に関する展示。CO2排出量減少、ナノ単位のコンタミネーション(異物混入)のコントロール、精密計器や制御、地震や火災対策など。
- レーザー (Laser):レーザーによる加工技術に関する展示。
- 材料 (Materials):フォトリソグラフィ、シリコンウェハー、化学溶液、化学気相成長(化学蒸着、CVD、Chemical Vapor Deposition)材料、セラミックパッケージ、IC基板などに関する展示。
- 光半導体 (Opto Semiconductor):赤外線LED・紫外線LED・小型LED・マイクロLED、OLED(有機EL)、VCSEL(ビクセル、Vertical Cavity Surface Emitting LASER、垂直共振器面発光レーザ)やEEL (Edge Emitting Laser、端面発光レーザー)などの半導体レーザー、PD (フォトダイオード)、シリコンフォトニクス (Silicon Photonics)などに関する展示。
- 中古設備 (Secondary Market):半導体製造装置の中古売買などに関する展示。
- 半導体設備・部品国産化 (Taiwan Localization Pavilion):半導体製造装置やキーコンポーネントの台湾における国産化に関する展示
- 検査 (Testing):AI、車用、SiP (System in Package)、アナログIC、ミックスシグナル(アナログ・デジタル混合)IC、マルチコアプロセッサなどの検査、組み込み自己検査や修復技術、メモリー検査などに関する展示。
日本の中小企業はこんな感じで出展
毎年SEMICON Taiwanで筆者が見かける日本の中小企業があります。ルーツは戦前にまでさかのぼる歴史ある企業で、平面加工・研削・研磨などに強みを持つのですが、加工設備自体は日本製ですが、台湾企業もお金を出せば購入できるものを使っています。しかしその設備の使いかたに秘密のノウハウがあるようで、台湾企業にできない難しい加工を受託して日本の自社工場で行っています。半導体も材料や構造がドンドン進化しており、それに伴い加工が難しい半加工品もドンドン増えているので、実はこういう受託加工には一定の需要があるのです。
もちろんビジネスを拡大していくことを考えれば、自社の加工ノウハウを組み込んだ機械や設備を販売するなどの方が良いのかもしれませんが、それは大企業に任せればよく、受託加工は自社のノウハウが漏れる心配が少ないし、中小企業ならではのビジネスだと言えると思います。
台湾半導体業界関係者のほとんどが顔を出す「同窓会」
このSEMICON Taiwanですが展示者側、見学者側、両方併せると台湾の半導体業界関係者のほとんどの人は顔を出すのではないかと思います。私も現地採用時代に以前日本の半導体製造装置メーカの台湾子会社でマーケティング担当をしていましたが、辞めて数年経っても展示会場に行くと以前の取引先の担当者に会うことがありました。
台湾半導体業界へ売り込む絶好のビジネスチャンス
ビジネスとして考えると台湾半導体業界の関係者に自社製品やサービスを紹介するのにこれほど適した場所はありません。最近は日本から台湾への半導体の生産移管が進んでいるため、半導体関連企業は日本企業であっても台湾での売り込みがかなり重要になっています。SEMICON Taiwanでも多くの日本企業が出展しています。
正攻法、オープンなアプローチこそが一番の近道
台湾を含め中華圏のビジネスでは、コンサルタントの人脈に頼りきってしまうことが良くあります。しかしどんな優秀なコンサルタントであっても、一個人の人脈には自ずから限界があると筆者は考えています。特に売り込みに行く場合、いくら紹介であっても交渉は売り手に不利な状況で始まることが多く、その点も筆者が余り紹介による訪問で売り込みセールスを行うことを余り良しとしない理由です。
特に半導体製造や加工で使う設備や消耗品や技術に関して、今までのものから切り替える場合、品質管理上、厳格な承認プロセスを経る必要があり、承認のためにはテスト結果をまとめたレポートを作成しなくてはならず、バイヤー(購買)以前に現場のエンジニアを説得することが非常に大事になってきます。そういう現場のエンジニアが勉強のためにSEMICON Taiwanに来てくれることが多いので、そういうキーパーソンと効率よく知り合うためにも展示会は上手く使うべきだと思います。
参考文献 (クリックすると一覧を表示)
- SEMICON Taiwan | Future Starts Here (https://www.semicontaiwan.org/zh/、2020年10月04日閲覧)
- III-V族半導体 – Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=III-V%E6%97%8F%E5%8D%8A%E5%B0%8E%E4%BD%93&oldid=68257502、2020年10月04日閲覧)
- ヒ化ガリウム – Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%92%E5%8C%96%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0&oldid=71545307、2020年10月04日閲覧)
- 窒化ガリウム – Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E7%AA%92%E5%8C%96%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0&oldid=78775671、2020年10月04日閲覧)
- 炭化ケイ素 – Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E7%82%AD%E5%8C%96%E3%82%B1%E3%82%A4%E7%B4%A0&oldid=78446304、2020年10月04日閲覧)
- 化学気相成長 – Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%8C%96%E5%AD%A6%E6%B0%97%E7%9B%B8%E6%88%90%E9%95%B7&oldid=78494854、2020年10月04日閲覧)
- フォトダイオード – Wikipedia (https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%88%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%89&oldid=76397618、2020年10月04日閲覧)
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- 注目される新パッケージ技術「FOWLP」 – 東芝が語った今後の方向性 (1) 半導体業界が注目するFOWLP技術とは何か? | マイナビニュース (https://news.mynavi.jp/article/20170123-fowlp/、2020年10月04日閲覧)